きつねそばと言えば甘く炊いたお揚げさんの乗ったお蕎麦。
ちなみに大阪ではそういうお蕎麦をたぬきと呼び、きつねというのはお揚げの乗ったうどんのことを指します。
京都のたぬきは刻んだ油揚げが入っていて、基本味付けは甘くなく、あんかけになっているか否かでたぬきときつねが分かれるのだそうで、ちょっと混乱してきますね。
時々、「きつねそばと言っても大阪人には通じない」なんていうネタを見聞きすることがあるのですが、今はインスタントの「きつねそば」だって全国区で売られていますし、大阪人でも分かりますよ!
今日はお揚げの油抜きの方法から、おいしく甘辛く炊く方法までをご紹介します。
油揚げの下処理
ひと昔前だと、油揚げは油抜きするのが必須でした。
使う油が良くなかったからというのもありますし、更に酸化すると味が落ちてしまうのが原因です。
今の油揚げは良質な油を使って揚げられているので、賞味期限内に使うのであれば、油抜き必須ではないと思います。
我が家では、味噌汁に入れる油揚げなどは一切油抜きをしていません(油抜きすることが習慣になっていたり、カロリーが気になる人は抜いた方がいいかも)。
油揚げが安い時にまとめ買いをし、刻んで冷凍庫に入れたものを大量ストックして凍ったままお味噌汁に入れると楽なんですよ。
ただ、だし汁を使って炊く(煮込む)場合は間違いなく油抜きをした方が美味しいです。
油膜が無くなり味が染み込みやすくなりますし、繊細な味付けを油のコクが邪魔をしてしまうことも防げます。
塩を入れた湯でグラグラ煮込む!
パスタを茹でるより強めくらいの、たっぷり塩を入れた湯で茹でます。
写真のゆきひら鍋には、小さじ山盛り2杯入れています。
多少入れすぎてしまっても最後に洗うので、塩辛くはなりません。
塩分には、油と結びついて水に溶けだす効果があるようで、気持ちがよいほど油が抜けます。
写真撮影用に切らずに丸ごと入れていますが、本当は長さを半分に切った方が茹でやすいです。
時々お箸でひっくり返しながら、最低5分(時間があれば、倍くらいの時間をかけて茹でると更に良い)グラグラさせます。
この作業で、ただ単に熱湯を掛けるだけでは抜けきれない内部の油まで抜けていきます。
茹で終わったら水で洗い流しキッチンペーパーで水気を拭き取りましょう。
艶がないのがお分かりでしょうか?
手で触ってもベタベタしない、完全に油の抜けた素のお揚げの出来上がりです。
きつね揚げの作り方
あま~いお揚げも、だしの効いた薄味のお揚げも美味しいですよね。
出来合いの味付きお揚げは、かなり甘さが強めに感じられるものですが、自分で作れば好きな味に仕上げることができます。
我が家では夫が甘い味付け好き・妻がそれほどでもない感じなので、中間を取って「ちょっと甘め」にしています。
ちなみに私たちは、結婚してから、白砂糖は一切使っていません。
安全性がよく解っていない人工甘味料や、味にクセのあるカロリーゼロ商品より、もっと安くてミネラル豊富、身体に優しいと思うのは茶色いお砂糖。
黒糖のような独特の風味もなく、料理にも使いやすいです。
腸内環境に優しいといわれている、オリゴ糖も含まれていておすすめです。
味付け
砂糖 小さじ3
だし汁 150㏄(顆粒だし小さじ1/2)
※だしの素を使わずにだしを取った場合は、塩をひとつまみ加えてください。
こんな感じの大きくてしっとりした油揚げを使うのがきつね用揚げとしてはおすすめです。
いなり寿司に使う場合は正方形の油揚げを使い、対角線上に三角に切るか(三角形のおいなりさんになります)、真ん中から切ります(こちらは長方形のおいなりさん)。
この商品は「油抜き不要」と書いてありますが、良質の油を使って揚げています!という自信の表れでしょうね。
…そうなんです。油抜きしなくてもいいんですよ。
メーカーさんの名誉のためにも言いますが、実際この油揚げ、そのままお味噌汁に入れたらとても美味しかったです。
でも、今回は“お揚げさん”を作りたいのです(甘く炊いた油揚げ=お揚げさん)。
味染みと味付けにこだわりたい方は、油抜きしてください。
「油抜き不要」だからって「油抜き禁止」なわけではないですからね。
作り方
だし汁の中に半分に切った油揚げを投入、最初に砂糖を入れて、ふつふつ沸いてきたら醤油と塩を加え、一旦つゆの味見をします。
これから煮詰めていくので、この時点より濃い味になることを考慮した上で、塩気と甘さを調節しましょう。
もっと甘いのが好き!と思ったらお砂糖を、ちょっとだけ甘さが足りないかな…?と思うくらいでしたら、みりんを少しずつ加えてみてください。
我が家ではきつねだけでなくカレーうどんに甘いお揚げを入れるのが好きなのですが、カレーには甘い味付けの方が合うと思うので、みりんを小さじ2くらい足しています。
上下を返しながら、弱めの中火で汁が少なくなるまで煮詰めていきます。
焦げないように注意してくださいね。
完成です。
温かいおそばやうどんに乗せて食べると美味しいですよ~。
いなり揚げの作り方
味付け
そばやうどんに乗せるきつね揚げと、いなり寿司に使ういなり揚げは、味付けを変えています。
麺に乗せて食べるきつねは、味を濃くすると、だし汁に甘いつゆが溶け出して、食べているうちにおだしの方までどんどん甘くなってしまうんですよね。
それが好きだと言う人も絶対数存在するので否定はしませんが、きつねが前面に主張しすぎてしまう気がするんです。
実家の蕎麦店では、素のお揚げを刻んで入れる、いわゆる京風きつねも出していたのですが、揚げって味付けしなくても、めんつゆ(おだし)を吸って美味しいんですよ。
でも、いなり寿司は別もの。
市販品は甘じょっぱくて、時々、醤油色?みたいな茶色のものも売っていますよね。
まあ、そこまで濃くする必要はないわけですが、ある程度しっかりめの味付けをしておかないと、いなりっぽくなりません。
あげの作り方
まずは油揚げを三角形または長方形に切ります。
油揚げをいつ開くか?なのですが、油抜きをする前の方が良いです(茹でるとやわらかくなってしまうので破れやすい)。
この油揚げ(商品名・すしあげ)は、切った瞬間、勝手にパカッと開いてくれて楽チンでした。
ただ、くっついてしまって開きにくい商品もあるので、そういった場合はすりこぎ状のもの(お箸でも大丈夫です)でコロコロしながら表面を押すか、包丁の柄で軽くトントン叩くと良いです。
油抜きの方法は同じで、塩を多めに入れたお湯でゆがきます。
表面に浮かんでしまうので、時々上下を返してください。
流水で冷やした後は、ぎゅっと絞ると裂けてしまいますし、とうふのカケラが断面から剥がれ落ちたり、形が崩れたりしますので、キッチンペーパーなどを使ってやさしく水気を切ります。
火にかける前に、先にあげを鍋に並べておきます。
先に調味液を入れてしまうと、揚げを入れたときに、先に液に漬かった部分と後から入れた部分で味にムラが出やすいですし、そもそもあげを綺麗に並べにくいです。
調味料を別の器で混ぜておいて、注ぎ入れたところ。
この時点で点火します。
あげが破れてしまわないよう、なるべく動かさずに味を染み込ませたいので、炊いている間は一切かき回しません。
落し蓋(アルミホイルで代用可)をして、弱めの中火で5分くらい火に掛けます。
徐々につゆが少なくなってくると思うのでチェックしてくださいね。
もう少しでつゆがなくなるな…と思うまで煮込んだら火を止めて、つゆが満遍なく行き渡るように上下をやさしく返しながらかき混ぜます。
あげに触るのはこの時だけで、後はそのまま自然に冷ましましょう。
酢飯の作り方
あげが甘いので、甘さ控えめの酢飯になっています。
まずはご飯を硬めに炊きます。炊飯器によるかもしれませんが、早炊きモードにすると若干硬めのご飯が炊けて便利だと思います。
ボウル(すし桶があればそちらで)にあつあつのご飯を入れ、調味料を入れて切るように混ぜます。
酢飯が冷えたら16等分にざっくりと、お寿司のシャリ状にまとめておきます。
あらかじめ、水に酢を加えたもの(これを手酢といって、すし職人さんは半々の割合で作りますが、家庭ではそこまで酢を強くしなくても大丈夫です)を用意しておくと、ご飯が手にくっつかなくて便利です。
ボウルの中で、しゃもじを使って放射線状に8等分にラインを引き、あとはそれを半分にするとやりやすいですよ。(多少、大きい・小さいの差が出るのもご愛嬌ですね)
おあげが冷めるのを待つ時間など、そのまま放置すると乾いてしまいますので、濡れ布巾か、キッチンペーパーを濡らして固く絞ったものを上から掛けておきましょう。
おあげに酢飯を詰めます
冷えたおあげを軽く絞り(絞りすぎるとジューシーさがなくなり、絞らないとべちゃっとして味も濃くなってしまうので、小さい子供と握手するくらいの気持ちで握ります)、酢飯を詰めます。
この時は手におあげの汁が付いているので、酢飯は手に付くこともなく自然と離れ、作業しやすいと思います。
完成!
みち(夫)はもっと甘いのが好きなようですが、甘さ控えめが食べたかった妻は譲りませんでした(笑)。
仕上がった後で味付けを変えるのは難しいですが、もし甘味の薄さが心配でしたら、完成したおあげをちょっとだけかじってみて、好みに応じてみりんを足し、ひと煮立ちさせてください。
ある程度のしっかり味には仕上がりますし、このレシピで「なにこれ、全然甘くないな」と思われることはまずないと思うので、まずはレシピ通りに作っていただくことをおすすめします。
まとめ
油揚げは、栄養豊富なうえ、もやし並みに価格が安定している優良食材です。
何といっても安上がりで、さらに自分好みの味にできるというのが手作りの良いところ。
このレシピは市販品より甘さを抑え、たくさん食べても飽きない味になるよう調整しましたので、きつねやいなり寿司があまり好きでなかったり、糖分控えめを心がけている方にもおすすめできます。
きつねそば(うどん)やいなり寿司を「おあげから手作り」というだけで何となく身構えてしまいそうですが、案外簡単に作れますので、試してみてくださいね。